…会社から帰宅したが、電気もついておらず、美雨の姿はどこにもない。
何度携帯を鳴らしても、携帯にも出ない。

…資料室から戻らなかった二人。
…何かあったのか?・・・不安だけが募っていく。

…どんなに待っても、その夜。藍子が家に帰ってくることはなかった。

「…朝か」
カーテンを開け、目を細める。

こんなに晴天なのに、俺の心はどしゃぶりのようで。
・・・いつもなら隣にいるはずの藍子がいないだけで、こんなにも心が暗くなることに驚いた。


…ガチャ。


玄関の鍵が開き、静かにドアが開いた。

「・・・ただいま、もどりました」
「・・・」

藍子の言葉に、返す言葉はない。

「どうしたんですか?そんなに怖い顔をして」
藍子は不思議そうな顔をして、俺に問いかける。

・・・その顔が、俺の気持ちを逆なでした。

「・・・何で、電話にでなかった?」
「・・・え??…すみません、電波の悪いところにいたみたいですね。しかも途中で、携帯の充電が無くなって。
電話しようと思っでも、できませんでした」

「…澤田といたのか?」
「・・・そうですけど?」

「…朝まで?」
「そうですね、朝まで一緒でした」

「・・・」
それ以上、もう、他に、何も言葉は浮かばなかった。
でも、心に浮かんだ言葉が一つ。

別れ。

その言葉しか浮かんでこなかった。