「ボーッとして、どうかしたのか?」
「いえ、別になんでも…」

そう言って、笑って見せる。

「…動揺してんの丸わかり。一体何があった?」
「本当に、なんでもないんです」
そう言い張る私を見て、澤田さんは溜息をついた。

「ま、言いたくないならいいけど」
「…」
何も言わない私の肩をポンと叩くと、仕事を始めた。

…仕事が始まって、約二時間後。
やっと、大谷さんが出社した。

入って来た大谷さんと目が合ったが、直ぐに逸らされてしまった。
…どうして?

溜息をつくと、澤田さんが私をチラッと見た。…私は何でもないとまた、笑う。

「…大谷と、なんかあった?」
的をえた質問に、笑顔が引きつる。

それを見た澤田さんは、ガタッとイスからたちあがると。

「資料取りに行くの手伝って」
「…え?」

驚く私を、澤田さんは強引に連れて行く。
大谷さんは、怪訝な顔で、私達を見つめていた。