だらしなく頬を緩めっぱなしにしていれば、楽しくてしょうがない私と反比例するかのように阿久津の眉間の皺は濃くなっていく。
「……あー、……ムカつく」
「え!?」
「……帰る」
そう言って徐にベンチから立ち上がった阿久津は、私の方を見ずに元来た道を引き返し始めた。
……なんか、怒ってる!? いや、気のせいかもしれない。
「待って待って」
慌てて彼に追いついて、横を歩く。
「なに? 家までついてくる気じゃないよね? 随分オープンにストーキングするんだね?」
「ストーキング!?」
「違うの?」
「……なんか阿久津不機嫌!?」
「そりゃあ」
当たり前だ、とでも言わんばかりに顔を顰められた。
私を見下ろすその目には恨みのようなものも籠っているみたいで、それに対して苦笑した後首を傾げた。
「なにかあるなら言ってよ」
「聞いて後悔すんのは辻野だよ」
意味深に嘲笑される。