妙な色気がある。
どきりとして、目がそらせない。私も笑おうとするのに、美しく笑う阿久津とは対照的に顔が引きつった。
「……何か言ってほしい言葉でもある?」
意味が分からない。
こっちはふざけた話をしているわけじゃないのに。
でも文句を吐く声が出ない。
「……辻野」
「……」
「辻野って」
「……は、はい」
相槌を打つのが精一杯で、掠れた声を誤魔化すように頷いた。
どんどん阿久津のペースに呑まれていく。
あの出来事を、結局うまく言いくるめられてしまいそうで怖い。どうして怖いのかなんて分からないけど。
急に吹いた風が尋常じゃないほど冷たく感じて、むき出しの肌に刺さった。