そもそも被害者は私なのに、どうしてこっちがこんなに悩まなくちゃいけないんだろう。


私たちが気まずくなった全ての原因は、隣で悠々と座っている青年にあるというのに。


明らかにおかしいと思うんですけど。




「で? 言いたいことってそれだけ?」


「え」


「なに」


「……あ、阿久津こそ、私に何か言うことがあるんじゃない? ……の? かな? ……って、思っ……て?」




無駄に疑問符を含んだ震え声になってしまったのは、あまりに阿久津が堂々としているから。



……あれー? なんか私が変なこと言ってるみたいな気がしてきた。


それだけ、って何だよ。それだけって。冷たい言い方。



そして一応私は問いかけたつもりだったのだけれど、一向に返事は返ってこない。



あれ、この人まさか私との会話に飽きて寝たわけじゃないよな、なんてさすがの阿久津でもないよね?


とやや心配になってちらりと横を見れば、それを待っていたと言わんばかりに彼は妖艶に口の端を上げた。