「唇と唇が触れあったよね!?」


「表現の仕方他にないの」


「キスしたよね!?」


「したね」




だけれども意気込んだそばから、半月間、悩みに悩み結局答えの見つからなかった問いの答えは、案外あっさり彼の口から吐露された。



……したっていう自覚はあったのか。


ていうかとりあえずは私の夢や妄想じゃなかったんだ。



安心したような、残念なような。複雑な感情を自分でも把握できない。




「……」


「……」




そして沈黙。訊きたいことは山ほどある。


何で、とか、気の迷いだったのか、とか、事故だったんでしょ、とか、熱のせいなんでしょ、とか、そうなんでしょ、とか。




「……辻野」




気まずいタイプの沈黙を破ったのは珍しく阿久津の方からで、驚いて背筋が伸びた。