もともと私の方から無理を言って、小春ちゃんのデート前の空いていたこの時間だけ、今いる小ぢんまりとしたカフェで話を聞いてもらう約束だったのだ。




「もう行っちゃう?」


「うん。栄美は? 一緒に出る?」


「いや、まだ紅茶飲み終わってないから、もう少しいるね」


「わかった。私の分のお金は置いてくから」




そう言うと小春ちゃんは、きっちり自身が頼んだパフェとオレンジジュースの分の720円を置いて、足早に私の前から離れて行った。



と思えば店の扉を押す直前、振り返って、ちょっと困ったように笑う。




「そろそろ決着つけなきゃ駄目だよ」


「……うん」


「頑張れ、栄美」




その言葉になんだか泣きそうになった。


ぐっと堪えて頷けば、遂に小春ちゃんは店を出て行く。



……やっぱり、阿久津とこのまま曖昧にあの日の出来事を濁して、気まずくいるのは嫌だな。


折角仲良くなれたのに、友達じゃなくなるなんて悲しい。昨日のクラス発表では、運が良いのか悪いのか、また同じクラスだったし。



もうお昼時のピークを過ぎたためか、お客さんは私の他におらず、しんとした店内で従業員のお姉さんが暇そうに欠伸して空気を吸い込んだ音が響いた。


ひとりぼっちでいるのはなんだか居づらい。さっさと紅茶を喉に流して、席を立つ。




――十分に、私は悩んだ。そろそろ阿久津に答えを教えてもらっても良い頃のはずだ。