「お願い~、彼氏さんに訊いてみてよー!」


「やだよ! バカじゃないの!? トータと阿久津は違うんだから、阿久津に直接訊けばいいじゃん!」


「そんなの訊けるわけないじゃん!」


「それ私も同じだから!」




小春ちゃんの言う通りだった。


私が疑問に思うことは、阿久津しか知りえないことで、他の誰にも分からないことだから。



だけど春休みに入って顔を合わせることがなくなって、時間が経ったことであの出来事を私からぶり返すのは気が引けるのだ。


もう夢や幻じゃなかったかと自分を疑うしかない。


……ていうか、そうであってほしい。



はああああああっと重い溜息を吐けば、テーブルに置かれていた小春ちゃんのスマホが音を鳴らすのと同時に画面が明るくなり、着信を知らせた。




「――うん、もしもし。……そう、わかった、……うん、今から行くね」




短いやりとりだけで電話はすぐに切られ、彼女は忙しく立ち上がる。