さっき後ずさった分の一歩と、更に二歩前に出されて、二人の距離は簡単に縮まる。



やばい。最近太って、二の腕がたるんでるのばれたかもしれない。


なんてビクビクしながら顔を上げれば、無表情で私を見下ろす阿久津と目が合った。



こうして向かい合ってみると、こんなに身長差があったのか、と少し戸惑う。




「熱もないし」


「……え?」


「正気なんだけど、」


「え?」




戸惑ったまま、間抜けにも口を開けっ放して阿久津の言った言葉の真意を探りながら呆けていた私の唇に、彼の手の平が強く押し付けられた。


それがひんやり冷たくて、ああ冷え症なんだなってどうでもいいことばっかりが思いつく。



目を伏せて視界にとらえた彼のごつごつした手が、すごく男の子っぽいなって思った。


いや実際男の子だけど。



……何も喋るなって意味なのだろうか。


鼻で呼吸するけど、阿久津の手に息がかかるのでは、と気になってちょっと息苦しい。


私ったら色気もくそもない。