一度だけそう呼ぶと、幸のお母さん、里美さんは嬉しそうに笑った。


「幸の事、宜しくね」


*


「じゃあ、また明日来ます」


「うん。宜しくね」


そう言って幸の家を出てから自分の家に帰って少し経った。


ベッドに横になりながら考える。


あの家のどこかに、幸はいたんだ。


そう思うと幸はやっぱり、近くて、遠かった。


また明日行って、会えるといいな。


そう願って俺はその日を過ごした。