初めは「ユキ」に過剰に反応していた俺がよく言うよと自分で思った。


けど、今は何よりも愛しい「ユキ」。


愛しい「幸」。


「幸のお母さんの名前も素敵ですね。宿で名前見た時も綺麗な名前だなと思ってました」


初めて幸の家族と出会ったあの夏、たぶん娘の名前は親二人から取ったんだろうなと想像はしていた。


やっぱりそうだったのだと、今分かった。


「何だか今、晴斗君に口説かれちゃった気分」


「え!」


「ねぇ晴斗君、私の事、『里美』でいいのよ?」


「いや、それは、何というか…」


良くない気が…する。