幸のお母さんは困ったように笑う。
「幸司さんは長男で一人っ子だったし、ご両親は裏切られたって思っちゃったのかもね。それで、あの人ちゃっかり自分の通帳は持ってきていて、私の実家の近くにアパートを借りてそこに住み始めたの。学校帰りによくそのアパートに寄ったわ」
幸のお母さんの顔は幸せそうで、申し訳なさそうにも見える。
たぶん、幸のお父さんのご両親に対して、申し訳なく思っているのだろう。
「そんなふうに過ごして、東京ではめったにない雪の日に、幸は生まれた」
穏やかな声だった。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…