「そりゃあそうよね」と笑う幸のお母さんに、俺は何も言えなかった。 ただ、その続きが知りたかった。 その後幸が生まれたのだから。 「痛かったけど、私は負けなかった。産みたいって叫んだの。この子を産みたいって。授かったこの小さな命を摘むような事はしたくないって。途中から幸司さんも一緒に頭を下げた」 幸のお母さんの目に力が入った。 今でも思い出すのだろう。 その若かった頃の本気を。