「えー。そうだったっけか?食われた事は覚えてるんだけどなあ。俺、最近、物覚え悪いみたいでさ」


と、すっとぼけた私の頬に理玖が優しく触れた。

その瞬間、一気に鼓動が早まる

「"俺"はやめろよ」

「……」

「今は二人なんだから」

「えっと、私……」


慣れてる言葉のはずなのに、このこっぱずかしさは何だろう。


「キスしていい?」

「聞かないでよ、そういうの…。この間は黙ってしちゃったくせに。それに、あんな事しておいて、謝らないなんて」

「だから、確かめた」

「バカ……」


と、理玖が、顔を寄せた時、教室のドアがガラリと開いた。


「おーい、理玖、片付け手伝う……」


!!!

パッと顔を上げた視線の矛先。

そこには、何が起きたか分からないといった様子の恭平が、私と理玖を交互に見ていた。