すると、理玖は私の顔を手で隠した。


「実際、あんなの口実で、好きになる瞬間なんて自分じゃ分かんねえよ。だけど、入学式にお前が鞄ぶつけてきた、あの時かな」


その手が再び下ろされたかと思うと、理玖は、優しく微笑んでいた。


「その顔見たら、何でか変な気になった。で、一緒に買い物行った時かな、妙に苛めたくなったりする自分がいて。そう思うと、やっぱ、最初から好きだったのかもな」

「あっ!そういや、理玖ってば、俺のコロッケ勝手に食べちゃったりしたもんな」

「お前、あれは違うだろ。ちゃんと返したのに食わないとかって突き返したの誰だよ」



言われてみれば、あの時、既に、自分も理玖を意識してたいわけで。