すると、突っ伏していた理玖が、ほんの僅かに視線を上げた。


「いらっしゃいませ」

「えっ?」

「恋人カフェ。一生ねーな、あんなバカげた文化祭」


文化祭、か。

私は、来年も皆とこうしていられるのかな。

来年も……。


「樋山理玖!指名させて下さい!!」

「はっ?」

「続きだよ、続き。こんなバカげた文化祭、きっともうないんだから」

「何言ってんだよ、バカかお前。俺、ゴミ捨て行ってこよ」

「照れてやんのー」

「あー、はいはい」


立ち上がろうとした理玖の腕を、私はとっさに掴んでいた。


「……あっ、悪い。行って来て」



引っ込みのつかない手を大慌てでパタパタ振ると、立ち上がりかけていた理玖が再び腰を下ろした。