「あのさ、茗。もし、私の勘違いだったら、ごめん」
「何?」
「もしかして、茗の好きな人って」
「お前だよ――」
多分、今、生唾を呑んだのは確かだと思う。
「……だけど、私達って、従兄弟だよね?そりゃあ、その……。従兄弟とは恋とかも出来るけど」
怖い。あの雨の日、恭平が言ってたこと、あれが事実だとしたら。
茗は何を思ってるの?
返事が返ってくるまでがとても長く思えた。
「……」
「ねえ……?」
「――俺達は……従兄弟じゃない」
疑いの心が、今、確信に変わろうとしている。
「茗。一つだけ、一つだけで良いから聞いていい……?」
「ああ」
「それって、茗のお父さんが叔父さんじゃないって事だよね……?じゃあ、茗のお父さんって……」
私の問いに戸惑ったのか、少しだけ間を置いた茗が、かすれた声で呟いた。
「――……理事長だよ」
その言葉を聞いた瞬間、私は、絶対に踏み入れてはいけない何かを感じた。