帰り道、もう一度、大崎さんの所に寄った私は、ウィッグを取り、再び男の姿に戻った。
「お疲れ、美夜ちゃん」
「本当ですよ。まったく、もう。こういうのは、今後一切お断りですからね」
ははっ、と、笑った先輩は私の頬を軽くつまんだ。
「ところで、大崎さんは?姿が見えないけど」
「ああ、電話中。亜子からだって言ってた」
「二人、どうなっちゃうんでしょうか」
「さあな。後の事は二人が決めるだろ?俺達は、すれ違ってた関係に、ほんの少し協力しただけ」
そう言って、私のウィッグをさらさらと撫でた先輩は肩をすくめた。
そして暫しの沈黙の後――。
「まあ、上手くまとまるんじゃねえ?考えてみりゃ、今更、俺と付き合いたいってのもおかしな話だしな……」
と、小さな声が私の耳をかすめた気がした。