「ところで、亜子。この間、聞いてた話しなんだけど」

「ん?大崎君との事よね」

「別れるって本当か?」


特に驚きはしなかった。


注文のメニューを持って来た店員が、私達を取り巻く重苦しい雰囲気に野次馬根性が入ったのか、ゆっくりとケーキを置いた。



「大崎先輩に不満か?」

「……不満って言うか」

「何だよ、ハッキリしねえと分かんねえじゃねえか。こっちだって話しあるって言うから来てんのに」

「うん、そうよね……。今更って言うかもしれないけど、私、俊と別れた事、後悔してて」

「は?」


もしや、これって、泥沼とか言う一番面倒なやつじゃあ――。

タルトのイチゴに突き刺す手に、つい、力が入ってしまう。