「いい時間になってきたな。そろそろ行くか」
「あっ、はい」
ヤバッ、緊張してきた。
バレなきゃいいんだけど。
ウィッグは……と、急に足を踏まれ、先輩を見上げた。
「もう、何するんですか!」
「悪い、つい」
「嘘だ、絶対わざとでしょ」
「そんな事ねーって。それより、心配しなくてもバッチリいけてるからさ」
と、睨み付けた先輩の顔が、驚くほど優しくて、ほんの一瞬、見とれてしまった。
「頼んだぜ、偽彼女」
その一言で、一つ、スイッチが入ったかの様に、私は大慌てで返事した。
「分かってます。先輩の方こそ約束忘れないで下さいね」
「多分ね」