仲睦まじげな二人の会話を見ていると、不意に、男の人が私に向けて視線を落とした。
「今日は面倒な事頼んでごめんね」
目立つ程カッコ良くはないものの、人の良さそうな、優しさが全面にあふれ出ている微笑みに引き付けられた。
「いえ…、気にしないで下さい。あの、それより、俊先輩とはどういった関係なんですか?」
「もしかして、俺の事聞いてない?」
「えっと、はい……」
先輩にチラリと目をやり、私は小声で返事した。
「聞いてるのは、今日一日、彼女のふりする事だけです。それと、さっき、先輩の元カノに会いに行く事を…」
「おいー、俊~」
「いや、まあ、追い追い分かるかなあとか、思いまして…。つい」