「だあー。しんきくせーな。出掛けるってだけで逐一報告きゃなんねえのかよ?こんな心配症の保護者が付きまとってんじゃ美夜ちゃんも大変だな。さっ、息抜き息抜き」
茗の表情が明らかに苛立って見える。
「先輩」
「何?」
「一応、忠告しておきますが、美夜は男ですし、変な気だけは起こさないで下さいよ」
「ああ、そういう事。それなら心配すんなって。ナンパに行くの。ナ・ン・パ。それじゃあ、行こうぜ」
そう言って、先輩は、促す様にバチンと私の背中を叩いた。
「あの、茗…。早く帰るから、心配しないで……」
「……」
気持ちは進まないけど、今日は先輩との交換条件だから。
「じゃあ、行って来る……」
沈んだ茗の横顔から見えた唇がまるで『バカヤロウ』と言っているようだった。
ごめんね、茗。
先輩に黙っててもらうには、今は、黙って行くしかないの――。