ニット帽を受け取った恭平が、首を縦に振った。
「そっか、悪かったな。美菜ちゃん。本当に変に意味ないから。理玖も気を付けろよ」
恭平が注意する程、理玖が軽々しいとは思えないけど……。
けど、まあ、彼氏ありって事にしとけば、危なくもないよね。
茗の載っけてくれた帽子をかぶり直し、近くにあった鏡を覗いた。
ウィッグに似合う、女の子らしい、リボンと小さな缶ボタンがついた帽子。
これ、去年の夏、雑誌で見た時、欲しいって言ってたやつに似てる。
茗ってば、覚えてたんだ――。
あの時はまるで興味なさげにしてたのに。