そう言えば、今日は夕方から雨だって言ってた気がする。


慌てて空を見上げたが、まだ雨が降っている様子はなかった。


ただ、空を見る限り、いつ、大粒の雨が落ちてきてもおかしくない程、どんよりとした分厚い雲が空全体を覆っていた。



「まだ降ってねえよ。気のせいだろ」

「確かに濡れた気がしたけど」

「じゃあ、あれじゃん?一番最初に雨に濡れる奴は……」

「バカ。とか言うんじゃねえだろうな」

「さすが!よく分かってるー」

「美夜。テメー!!」



恭平のゲンコツを素早くかわすと、私は、寮への近道へと突っ走った。


ここからなら、歩いて十分の所が五分に短縮される……の、はずだったのだが、大きく貼り出された工事中の文字。



「恭平。この道、工事中だってよ」

「そうみたいだな。近道すんなって事で、今日は普通に帰るか」

「仕方ないもんな」