「先生は、結婚願望とかないんですか?
同級生も結婚してるでしょ?
ほら、この前来てた医大のイケメンドクターが結婚することになったって言ってたじゃないですか」
数週間前に瞬がうちに来た時、原さんも会っているので、瞬が結婚する気になったというのも話していた。
「あぁ、瞬のことですね。あいつ、全く結婚願望がない奴だったんですよ」
「あんなにイケメンなら、女性には困らないから、遊んでいたかったんでしょ?」
そう見えたのか。まぁ、そう見えても仕方ないな。
「いや、あいつは、あぁ見えて仕事一本タイプなんですよ」
「でも、結婚することにしたと」
意味ありげに頷きながら話す原さんは、何かを悟っているようにも見えた。
「はい。あいつのあんな顔を見たの初めてなんです」
「あんな顔?」
「彼女のことを話す時、すっごい幸せそうなんですよ」
「へ~、ラブラブなんですね」
「そうなんです。まぁ、付き合って数ヶ月だからそうなんだろうと思っていたんですけど、自分のことに置き換えてみたら、そんな時期があったかな・・・って」
「せんせ~それは、人それぞれじゃないですか?」
「そうですかね・・・」
「言わせてもらいますが、先生が、彼女さんのノロケ話をしているところが想像できません。
先生、そんなタイプじゃないでしょ」
確かに。自分でも想像できない。
「・・・・・・まぁ、そうなんですけど」
「そうです!」
僕のことなのに、原さんに言い切られた。
それでも、仕方ないなと思ってしまう僕は一体何なんだろう。