「要するに、先生に結婚する気がないんですね」


突然、核心に迫られて、言葉を失ってしまった。

固まっている僕を見て、原さんは、「図星ですね」と笑っていた。


そんな原さんを見ても、なぜか僕は不快な思いはしなかった。


「・・・実はそうなんです」


しかも、いつの間にか、原さんのペースに乗せられていた。


「彼女さんに不満があるんですか?」


「いえ、特には。あっ、でもしいて言えば、すれ違いなんですよ」


言うつもりもなかったことが、自然と口から出てきたことに驚いた。


「塾の先生って言ってましたよね。なるほど、先生が仕事が終わる頃、彼女さんは仕事なんですね」


「そうですね」


もしかしたら、原さんは、カウンセラーに向いているのではないか?と真剣に思った。


「彼女さんは、結婚しても仕事は続けるつもりなんでしょ?」


「どうでしょうかね・・・」


「なぁに、先生、そんな話もしていないんですか?」


「はぁ・・・」


「はっきりしないんだから・・・」


「・・・・・・」


原さんは、呆れるように笑っていた。


はきっきりしないも何も、これまで彼女と結婚についての話はしたことがなかったのだ。

原さんに聞かれて、彼女は結婚したら仕事を続けるのか?
それとも辞めるのか?
どっちなんだろうと思ったくらいで、僕がどうして欲しいという希望もなかった。