「えっ、先生、結婚するんですか?」
50歳手前の原さんは、声を躍らせて聞いてきた。

まさに芸能レポーターかのようだった。


「いや、その・・・」


勢いよく聞いてきた原さんに、曖昧な返事しかできなかった。


「なんだかはっきりしませんね・・・彼女さんはいくつでしたっけ?」


原さんは、いつもこうだ。

テキパキしていて、迷うことなく自分が聞きたいことを聞く。


「・・・29です」


「付き合ってどれくらいでしたっけ?」


間髪入れずに質問は続く。


「6年ですかね・・・」


「そりゃ、先生!プロポーズしないと!」


そう言われると思った。


日頃から「早く結婚しないと、婚期を逃す」と26歳になる娘さんの心配をしていたので、
僕の今の状況で結婚を勧めないわけがない。


僕は、聞く相手を間違えたと感じたが、もうすでに後には引くことができない感じだった。


「やっぱりそうですか?」

「そうですよ!きっと待ってますって!」

原さんは、何度も頷きながら持論を述べた。


「彼女さんは、結婚をにおわしたりはしないんですか?」


「いや、まぁ」


これ以上、話したくはなかったので、曖昧に答えたが、許してくれるわけもなかった。