「なあ・・・ジラフ」
上野山が僕の向かいに座り、こそこそと話し出したので、身を乗り出し「何?」と聞いた。
「あの子、かわいいだろ?」
目配せする方向には、百井さんがいた。
彼女は別のテーブルのパソコンに向かっていた。
ちょっと待て。
上野山が以前からずっと言ってた『職場の気になる子』って百井さんなのか?
「ああ・・・そうだな」
「だろ?」
少し頬を赤らめて照れている友人に僕は何と言えばいいのか?
そう言えば、僕がこの病院の当直に入ると瞬に言ったら、
「俺が睦美と付き合ってるのは、絶対に上野山には言うなよ」と釘を刺されていた。
その時は同じ病院内だから知られたくないと思ってるんだろうな、と思っていたが、どうも違うようだ。瞬、あいつ・・・上野山の好きな子を横取りしたのか?なんて奴だ。
「ももちゃん、お疲れ~」
「上野山さん、お疲れ様です」
百井さんは、近づく上野山に笑顔で応えていた。
「何してるの?」
上野山がグイグイと近づくと、百井さんは少し離れるように避けていた。
あっ、上野山・・・残念ながらお前好かれてはないぞ。