「おう、ジラフ!今日はありがとう」
ニヤニヤしながら我が友人の上野山がナースステーションに入ってきた。
久々に会うが、また太ったんじゃないか?
「いいよ」
それよりここで『ジラフ』って呼ぶの止めてくれよ。
ほら木村さんも『ももちゃん』も見てるじゃないか。
「上野山くん、榊先生と知り合いなの?」
木村さんが仕事の手を止め、興味津々といった表情で聞いていた。
「そうなんです。高校の同級生で・・・」
『高校の同級生』と言った瞬間、『ももちゃん』の顔が強ばった。
決まりだ。
この子が百井さんだ。
「え~じゃあ、俺様ドクターとも知り合いってこと?」
木村さんは眉をひそめて、ずいぶん嫌そうに言った。
俺様ドクターとは誰だ?
あっ、瞬か。
百井さんが気まずそうにその場を立ち去ろうと席を立った。
おそらく瞬の話題を振られるのが嫌だからだ。
それにしても『俺様ドクター』って、あいつどんな態度とってるんだか。
「そうそう、瞬とジラフも同級生で友達なんです」
「そのジラフってのは?」
ほら、聞いてくるだろ。
「あっ、ジラフってのは榊のことで、こいつ『さかき りんたろう』って名前で、仮名にすると中に『きりん』って入ってるから、そこからジラフになったんです」
「へ~面白いこと考えるのね」
「僕が考えたんじゃないですよ?友達がね・・・」
木村さんと上野山は二人で笑っていたが、次の瞬間ナースコールが鳴り、木村さんは出て行った。