「先生、何ニヤニヤしてるんですか?患者さんお呼びしますよ」


「あっ、はい」


しまった。

机のマットに挟んでいた熊谷さんの名刺を見てニヤついていた。

これじゃ、彼女に好意を持っているのがバレバレじゃないか。


「おはようございます」


「嶋田さん、おはようございます。今日はどうされました?」


「昨日から咳が出ていて寝れなくて。もうすぐお盆休みに入るでしょ?だから先生に診てもらおうと思って」


そう、もうすぐ盆休みに入る。

だから、今日明日は患者さんが多くなることが予想される。


「胸の音を聞かせてくださいいね」


いつものように仕事をする。

その日常に熊谷さんの名刺があることで少しだけ色づいたような気がしていた。