「せんせ~、熊谷さんみたいな女性がタイプでしょ?」
ニヤニヤしながら近づいてきた原さんは、とんでもないことを言ってきた。
「えっ?」
いきなり何を言い出すんや。
「先生、ずっとにやけてましたよ?」
「えっ・・・」
確かに、彼女の笑顔を見ていると自分の顔が緩むのは自覚していたが、ずっとではないはず。
「でも独身でよかったですね!年齢は聞けなかったけど。でも、きっと27、8歳ですね」
「えっ、もしかして・・・」
原さんは、僕の様子を見て、結婚しているのかや、年齢を聞き出そうとしたのか?
「その、もしかしてですよ。先生がにやついているから聞いたんですよ。先生はどうせ聞けないでしょ?」
どうせって・・・なんだよ。
・・・当たってるんだけど。
「でも、聞いてどうするんですか・・・」
そうだ。
聞いたところでどうなるんだ。
「先生!何を言ってるんですか!出会いは大切にしないと!今の彼女とは結婚しないんでしょ?」
いや、結婚しないとは言ってない。
「・・・・・・」
「じゃぁ、結婚するんですか?」
その、『じゃぁ』は、どこから来るんですか?僕の心の声が聞こえているのですか?
「いや・・・」
「ほら、はっきりしない」
完璧、原さんは僕の態度に呆れている。