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カレンダーを見ると、『10時 楢崎さん』と書かれてあるのに気づいた。


「先生、楢崎さんがいらっしゃいました」


「はい、入ってもらって」


今日は、楢崎さんの訪問日。

そして、彼女がここに来るのは最後。


「失礼します」


「失礼します」


しっかりしたノックの後、楢崎さんと後任の担当者だろうか、女性の声が聞こえたので、「はい、どうぞ」と返事をし、体ごとドアの方を向いた。


「先生、こんにちは。いつもお世話になっています」


相変わらず元気な楢崎さんが姿を見せた。

そして、楢崎さんの後ろから控え目に入ってきた女性に目を奪われた。


目が大きく鼻筋が通っていて、とても可愛らしい女性だった。


20代半ばくらいなのだろうか・・・。


楢崎さんより随分若い。

色が白く、離れていても肌がきいれいであることがわかる。


そして、肩までの髪は、くるっと内巻きになっている。

それがまた可愛い雰囲気を倍増させている。


「先生、こちら後任の熊谷(クマタニ)です」


「熊谷玲子と申します」


クマタニレイコと名乗った彼女は、僕の前に名刺を出してくれた。

その仕草がとても上品だった。

彼女から名刺を受け取ると、名前を確かめた。


「よろしくお願いいたします」

と言うと、ゆっくりと頭を下げた。


「あっ、こちらこそよろしくお願いします」


僕が動揺しながら頭を下げると、熊谷さんはニッコリと笑いかけてくれた。


「先生、では作業が終わりましたら面談をよろしくお願いします」

楢崎さんが、テキパキと段取りを話すと「失礼します」と診察室のドアを開けて出た。


二人が作業をしているのは副院長室。

つまり、僕の部屋だ。

10時から12時頃まで作業をしているので、診察中の僕が作業の様子を見に行くことはない。

「先生、患者さんをお呼びします」



原さんは、いつものように患者さんを呼んだ。