映画は、今話題になっている女子高生と教師の恋愛映画だった。
しかし、最終的には主人公の女子高生は、教師ではなく同級生と結ばれるという話だった。
「あぁ、感動した!隆(リュウ)が夜行バスに乗って沙知(サチ)に会いに行くのがいいわ。かっこよすぎ!」
加奈は、映画の感想をマシンガンのように語っていた。
僕は「うん、うん」とうなずくのみ。
ああいう映画を見ると、自分にもあんな出会いがあるのではないか?と本気で考えてしまう。
「タローくん、お昼食べよ。私、パスタがいいいけど、どう?」
「うん、いいよ」
加奈は、いつもこうやってリードしてくれる。
僕に「何を食べたい?」と聞いても、答えなんて出ないのがわかっているからだろう。
デートしても、話題はもっぱら仕事の話だ。
彼女が勤務している塾の先生や生徒の話だ。それを僕は、「うん、うん」と聞いている。
「タローくん、デザート食べるでしょ?」
「あぁ、うん。デザートセットにしようかな。加奈は?」
「私は食べないよ」
加奈は、僕と違って甘いものがあまり好きではない。
だから、いつも僕だけがデザートを食べる。