「ジラフはどうなんや?彼女と結婚するんか?」
ほらまたここでも聞かれる。
「いや、まだ考えてない」
「まだって、お前ら付き合って何年や?」
「6年」
このやりとりは、年に2、3回はやっているような気がする。
それでも僕は結婚しようとは思えなかった。
「そろそろやろ?」
雄哉は促すが、僕は返事はしなかった。
「結婚ってそんなにいいものなん?」
僕は、結婚について考えていると、いつもこの疑問に当たる。
「うん、いい」
雄哉は自信満々で言った。
雄哉は、今の外見に似合わず一途で、高校時代に付き合っていた子と一度は別れたものの、復縁して5年前に結婚した。
「そりゃ、別れた時、あれだけ未練タラタラだったもんな」
瞬がからかうように言うと「うっさいなぁ」とぼやいた。
「帰ったら、好きな女がいてくれるとか幸せじゃねぇ?」
そう語る恋愛マスターは、女の子のように目を輝かせていた。
結婚して5年が経ち、子どもも2人いるというのに、あの夫婦はいつまでも新婚カップル顔負けのラブラブぶりである。
そんな話を聞かされ、今までは瞬も興味がなさそうだったのに、今日は「うん、うん」と頷いている。
「なんやねん、僕だけが結婚に価値を見いだせないのか」
「ジラフ、彼女の何が不満やねん」
雄哉は、首を傾げて、聞いてきた。
瞬は、すでに知っているからか何も言わず、料理を口にしていた。
「なんかさ、加奈と結婚するのが想像できへんのや」
「想像か。楽しいやろうなとも思わないのか?」
「ああ」
はっきり言ってない。
6年付き合って、最近は1ヶ月に1回会えばいいところ。
会えない間も会いたいなんて思わなくなってしまった。
それでも、2人でいると楽しいし、居心地もいい。
でも、一緒に暮らそうとは思わない。
「もうさ、ごちゃごちゃ言ってないで、結婚してしまったら?気が合わないわけじゃないんやろ?」
出た。
雄哉のいい加減なところ。
「そう簡単に言うなよ。気は合うけどさ・・・」
口が裂けても、雄哉みたいな夫婦が羨ましいとは言えなかった。