「ジラフは、典型的な草食男子だよな」
そう僕に言うのは、高校からの付き合いの雄哉だ。
加奈とのデートがキャンセルになったので、僕は瞬と飲みに来ていた。
しかし、なぜかここには雄哉もいる。
「雄哉、お前、オーナーなのに飲んでていいのか?」
「大丈夫、大丈夫」
雄哉は、瞬の言葉を軽くあしらうと、近くを通った店員の女の子に「生中とあれ持ってきて」と言った。
そう、ここは、雄哉が経営する創作居酒屋。
オーナーなのに、僕らと飲もうとしている。
当時からいい加減なところはあったが、最近はそのいい加減さに拍車がかかっているような気もする。
それも僕たち仲の良い人間だけが知っているだけで、高校時代周りは彼を真面目な奴だと思っていただろう。
なぜなら、成績は常にトップクラス、真っ黒な髪に黒縁メガネといった出で立ちだったからだ。
大学も周りの期待通り、有名国立大学の法学部に合格した。
誰もが弁護士やそれに近い職に就くものと思っていた。
今は、弁護士どころか、風貌は詐欺師に近いといってもいいくらい、軽い。
しかし、経営能力には長けているらしく、県内外5店舗を経営するオーナーなのである。
しかも、どの店も経営状態は良いらしい。