「あの…。」
陽が傾き始め、日陰が覆い始めている校舎裏。
大池涼子(おおいけりょうこ)は放課後、花隈誠也(はなくませいや)に呼び出されていた。
周りには誰もいない。
「私…、花隈君に何か悪い事をしたのでしょうか…。」
涼子は目の前にいる誠也を上目使いで見つめる。
少し耳にかかった茶色い髪が風に揺れている。
色白だが、切れ長の目と口と鋭い輪郭。
学年一モテると言われている誠也を前に、涼子は明らかに怯えていた。
誠也はそんな涼子を落ち着かせるように、右手で優しく髪を撫でる。
「そんなに怖がらなくてもいいんだよ。」
「いや…、でも…。」
どうしても恐怖心を失くす事が出来ない。
悪い事しか考えられない。
「俺さ…。」
じっと見つめながら囁く。