【夢実side】



「新入生の入場です」



その言葉と共に開かれるドア。



あたし達を見つめる上級生。



我が子を探す親たち。



そう、入学式です。




あたし、高梨夢実は…


中学生になりました…!!



めっちゃ緊張してます…。



いきなり上級生に目を付けられないように…



スカートは規則正しく、髪型はおさげツインテールにっ!



小学校とだいぶ印象変えましたよ…。



はぁ、こんな地味子ちゃんスタイル…


恥ずかしすぎるでしょう!





「初めまして!今日からこの1年1組を担当する…」


教室を見回したけど、カッコいい人はいない。


まぁ、そう簡単にはいないよね…。



担任の先生も40代過ぎっぽいし。


話聞いてなかったから担任の名前も分かんない。



「では、これから一人ずつ自己紹介してもらう。出席番号順にな、男子から。」



皆まだ緊張しているからか、誰も何も言わない。



ちゃくちゃくとあたしの番が近づいてくる…。



「はい、じゃあ39番!」



あたしはスッと立って皆の方を向く。



最悪な事に、席は4列目の一番前だった。


めっちゃ見られる場所…。


「初めまして、赤小から来ました。高梨夢実です。これからよろしくお願いします。」


注目されるのは嫌い。みるみる自分の顔が熱くなる。


ペコっと頭を下げ椅子に座ると拍手をされた。


そして数分後、全員の自己紹介が終わった。



「よし、今日は自己紹介だけで終わる。明日寝坊しないように。起立!」



先生が全員を見渡し「さようなら!」と大きい声で言った。


これにあたし達は「さようなら」と返す。



「おーい夢実ー!こっちー」



廊下からあたしに手を振る女の子。



米田真愛。小学校からの信友で、大体あたしの事なら熟知している。



小学校は2年から6年までずっと同じだった。



でも、中学ではクラスが別々に…。



まぁ、しょうがないけど。


「真愛は誰と同じだった?」


「えー…。美佳…。」


ぶっ…。まじ、ドンマイだわ…。


美佳って言うのは小学校でも嫌われてた子


見た目はスタイルは良いし、美人類に入るかも。


でも、性格が好まれない。


気分屋でもあるから関わると面倒な存在。


小学校ではイジメをよくしていて、嫌われ者。


まぁ、嫌な肩書ばかりを持っている人って事ね。



「関わんなければ大丈夫でしょ。ま、頑張れ」


運が無いのか、何なのか…(笑)


「夢実は?誰となったの?」



「ん~。もうすぐ出て来るよ」



そう言い教室を見ると、全力でこっちに向かって来る子。



「夢実―!真愛ー!」


抱きつかれそうなのでギリギリで避ける。


「ドタっ」


廊下に重い音が響く。



「よ…よける事は無くない?」


涙目でそう訴えて来るのは、和田南樹。


あだ名はなっちゃん。

他にもたくさんあるけど、一番しっくりくるのがこの呼び方。



「綺麗にこけたよね。」


「うん。超綺麗だったよ。」

あたしの言葉に共感する真愛。



「あれ、菜優は?何組なの?」


菜優はなっちゃんと仲が良い子。


あたし達とも仲が良いけど、小学校の時はそこまで接点はなかった。



「ん~。2組じゃない?2組以外出てきてるし。」


あたしの言葉に真愛が気づいたように


「あぁ!2組の担任って熱血らしいよ。」


これになっちゃんは嫌な顔をしている。