「ゆり?」

情事に関係あるのだろうか。


しかし、萎えるどころか男はむしろ興奮した。


百合の話なのにどこか性的な話のように欲が増す。


それはたぶん、彼女の目が妖しく美しいからだろう。


「そう。ある人が、お前は目立つ綺麗な百合だって言ってくれたんです」


じ、と目に吸い寄せられる。


奥の奥まで覗いてみたいと、男は切望した。


彼女の瞳の裏になにか小さい小人がいて、俺の視線を引っ張っているのかもしれない――そうバカみたいな発想が男に浮かんだ。





刹那。






ドクンと、嫌な音がはっきりと鼓膜を揺さぶる。

続いて、息が吸えなくなった。

口を開くが、まったく息ができなくなっていると、男は気づくだけの思考がなかった。



「っか、くっ…は…っ」



意味がわからず、男は首を押さえた。

目を開き、口を開き。

よだれだけではなく、涙までもが垂れ流される。



しかし、男は彼女を見ることをやめなかった。