「え?」

優希は、学生証を受け取った。

「つ、土田…か、可憐……」

優希はその名前を見て、口を押さえ、涙を流し出した。

(なぜ…泣く?)

オーナーの反応は予想できたが、優希の反応は予想できなかった。



優希を後ろから抱き締めると、オーナーは言った。

「今から、行ってくる。可憐に会いに…」

「あ、あたしも…」

優希は涙を拭いながら、オーナーの顔を見た。

オーナーは首を横に振り、

「まずは…僕だけで行く。君は…店を頼む」



「わかりました」

優希は、素直に頭を下げた。

顔を上げた時には、もう涙は消えていた、


オーナーは頷くと、優希から返ってきた学生証を、エイリに示すと、

「これ…借りていいかね?」

「僕のでないので…本人に返して頂けるならば…」 

「じゃあ…借りるよ」

オーナーは、学生証を持ったまま、今来た道を戻っていった。

近くの駐車場に、車をとめているようで、車のエンジンが聞こえてきた。



「工藤くんでしたね」

音のする方を見ていたエイリは、優希に声をかけられて、振り返った。

「さっきの学生証をどこで、拾ったのですか?」

優希の質問に、なぜか…エイリは素直に真実を告げることを、躊躇った。

だから、嘘を述べた。

「道で拾いました」