それなのに、男は偉そうにするか…彼氏のように振る舞うか…。

お金で買ってる関係なのに、それがわからない。

男と女……どちらも人間だから、お金を払っても、貰っても…商売だと、すべてが割り切れない。

可憐は、まだそこまで…お客と複雑な関係にはなっていない。

けど、更衣室で泣いてる若いホステスを、よく見る。可憐と同期ぐらいか少し在籍が長い子が、多い。

不細工。ブス。

普段なら、面と向かっていわれない言葉も、店内では目の前で言われる。

それは、悪口ではない。

商品に関する感想であり、店側へのクレームだ。

こんな女で、金を取るのか。


激しく傷つけられる自尊心。

泣いてるホステスを、冷たい目で、ちらっと見ると、サキは着替えを済まし、更衣室を出ていく。

サキの取り巻きの一人である奈々が、一言だけ…何とか聞こえるくらいの声を発した。

「だったら、来るなよ。そんな顔で」





(すさんでるなあ〜)

可憐は、さっさと着替えを済まし、更衣室を出た。



理沙の愚痴は、まだまだ続いていたけど、

可憐は、もう聞いていなかった。

(だって…同じことの繰り返しだもんなあ〜)

ちょっとうんざりしていると、

更に、うんざりするようなやつが来た。

「ねえ〜彼女達!」

最初は、ホストのキャッチかと思ったけど…。

「はあ〜?」

理沙の反応で、違うとわかった。

一応ホストなら、行くことはないが、ちょっとは愛想よい反応をする。

理沙がうっとおしそうにするときは、あまりにも不細工過ぎるホストか……スカウトだ。

「いい仕事あるんだけど?全額日払いもOKだよ」

キャバクラやお水のスカウトであまり、かっこいい人に合わない。

「うざえんだよ!」

理沙が言ったが、スカウトは理沙に向いてなかった。

「別に、隣に座って、お酒を作るだけでいいから」

スカウトは、理沙に背を向けて、可憐にだけ話し掛けていた。

「君だったら、すぐにNo.1になれるからさ」

無理やり、ねじ込むように渡された名刺。

「気が向いたら、連絡してね」

スカウトは、あっさりと可憐から離れた。