ただ呼ばれたら、席に行き、お酒を入れ…時間が立つまで話し、指名されなかったら、次の席へ。

指名されたら、そこにいる。

単純に、それだけと思っていた可憐は、甘かった。

ただ遊びの金をつくる目的で働いてる子は、結構気さくだけど…

子持ちのバツイチや、生活の為必死に働いている女達に、そんな余裕はなく、

さらに、自尊心の強い女はさらに、厄介だった。

「可憐!」

終電前までの為、店を出て駅へと向かう可憐を、誰かが呼び止めた。

振り返った可憐は、見たことのない顔に首を捻った。

(誰だっけ…)

そんな可憐の様子に気づかずに、走りよってきた女は、息を切らしながら、

「今日、店暇だがら、上がらされたよ」

可憐は、その女の顔をまじまじと観察して…呟いた。

「理沙?」

「何言ってんのよ。決まってるじゃん」

理沙は、可憐の背中を叩いた。

「メイク落としたんだ…」

「当たり前でしょ。地元帰るだから!あたしとバレないようにしないと!メイクとっただけじゃ…駄目かな?」

鏡で、顔を確認しょうとする理沙に、

「絶対バレないから…」

可憐は小声で、囁くように言った。

「なんか言った?」

「いえ…何も」

可憐は、顔を逸らした。

(化粧で変わるっても、限度がある)

最近改めて思うけど、化粧で変わらないって思ってるやつ程、変わる。

(だから…面白いんだけども…)

もともと目鼻立ちがはっきりしている可憐には、あまり濃い化粧は似合わない。

香水も、かける気がしなかった。

ホステスにいる女女している人は、苦手だった。


「まったくよお!今日の客、まじムカつくぜ!」

隣で、理沙の愚痴が始まった。

「席着いたら、いきなり説教だぜ!一回メールかえすのを遅れただけで!」

どこの世界でも、彼氏気取りはいる。

「言いたいだけ言った後に!最後の台詞が、お前は俺が、どんなに大切に思ってるか!わかってるのか!」

理沙は、思い切り嫌な顔をし、

「てさ……馬鹿じゃない!」

「そうね…」

可憐は、頷いた。

ホステスは商品であるけど、人間だ。金で指名されているから、よっぽどのことがないと断れない。