「え?」

いきなりで、意味がわからない可憐は、 聞き返した。

ボーイは、可憐を無視するかのように、マイペースで言葉を続けた。

「ゲスト(飛び込み、新規)は、ほとんどいない。」

ボーイの横顔から覗く瞳が、まばゆいホールから、漏れる光に反射していた。

「つまり…お客の殆どは、気に入ったホステスがいる」

氷が溶けるから、長くは話せない。

「あの客は、サキの太い客だ。気をつけろ」

そう言うと、ホールに戻ろうとするボーイを、

可憐は、引き止めた。

「ありがとう…。だけど、あなたの名前は…」

ボーイは、それでも可憐を見ず、

口だけを動かした。

「英利(ひでとし)…だけど…」

扉を開き、

「エイリでいい」

ビニール袋を担ぎながら、煌びやかな店内に戻っていった。


「エイリ…」

それが、可憐とエイリの出会いだった。