「はぁ〜」

深い溜め息をつきながら、待機席に座っていた可憐に、

「どうかしたの?」

隣に座っていた理沙が気づき、心配そうにきいていた。

華憐で働いて、もう1週間近くたつと、

自然と仲の良い友達もできてきた。

理沙はその1人だった。

濃いアイシャドウに、ブロンドが派手だけど、

化粧をとると、びっくりする程、地味な顔になる。

化粧は凄いと、初めて感心させられた程だ。

「えっ?べ、別に…」

可憐は驚いた顔を、理沙に向け、

ゆっくりと視線をそらせた。



もう営業は始まっており、人気のあるホステスは、指名のお客についていた。

「そんなはずないでしょ!絶対、なんかあったって」

しつこくきいてくる理沙に、ちょっとうんざりしながら、

さらに溜め息をつきながら、

「なんでも、ないって」

可憐が言った時、

お客が店内に入ってきたので、機席にいたホステス全員が立ち上がり、

お客に頭を下げる。

指名のホステスをもつ常連は、待機席を見ないが、

指名を持たないお客や新規のお客は、

品定めをするように、舐め回すように、1人1人を見ていく。