「ひ、ひばら〜い!」

可憐は、主任から手渡された封筒を、両手で握り締めながら、震えていた。

「ああ…全額はでないけど、八千円くらいなら」

異様に喜ぶ可憐に、少しひきながら、主任は説明する。

「は、は、八千円!」

可憐は、封筒を天高く掲げ、嬉しさのあまり、その場で一回転する。

「そんな大金。初めて、手にしたよ」

可憐はそっと、封筒の中身を震えてながら、覗き込んだ。

「日払いは、給料から引かれるから…あまりやりすぎると、給料なくなるからね。気をつけて」

呆れながら言う主任の言葉も、興奮気味の可憐には、聞こえていない。

小躍りしながら、可憐は帰っていく。

可憐の就業時間は、一応終電までだ。

着替えをすますと、まだ営業している店内を尻目に、

可憐は、店を後にした。


そんな可憐の後ろ姿を、見送る者がいた。


「どおしたんだい?優希」

水割りをつくる手を、少し止めてしまった優希は、

お客の声に、我に返った。

「すいません。少し…ぼおっとしてしまって…」

優希は、グラスをお客の前のコースターに置くと、頭を下げた。

「もお〜!しっかりしてよね。やっと、席に帰ってきたんだからさあ」