(わかりやすいやつ)

可憐は呆れながらも、

席に戻ってきた指名のホステスに、軽く会釈した。

ホステスも、軽く微笑む。

No.5 サキ。

この店でも、ナンバー5に入る程の人気者だけど…可憐は恐かった。

いつも笑顔だけど、目を奥は笑っていない…とよく言うけど、

サキを見て、初めてそういう瞳を見た気がした。

店では、25で通しているが、

絶対三十路に近いはずだ。

年齢にも敏感な可憐は、そう思っていた。


店は、少し落ち着き、

可憐は待機席へと戻った。

待機席は、お客が入ってくる入口近くにあり、

初めてのお客が、女の子を物色できるようになっていた。

「はぁ〜」

少し溜め息をついた可憐の周りは、無表情に、メールを打つ女達が、数人いた。

可憐のように入ったばかりか…指名を取れないベテランばかり。

会いたいとか、さみしいとか…ハートを打ちながら、

携帯の画面を見つめる、その表情に、感情はない。

仕事だ。

(すごいなあ〜)

他人事のように、可憐は感心した。

そう…この商売に、携帯は必需品だ。



だけど、可憐は携帯を持っていなかった。