シエラが姉たちに再び呼び出されたのは、夜遅くのことであった。娼館はもともと夜の店であるが、それでも眠気はやってくる。シエラは今日の客を思い出し、げんなりしてしまっていた。
今日の客はシエラの身請け話を持ちかけた主人であった。明らかに下心しかない主人の態度に、寒気を覚えた程である。
足枷を取ってもらい、重い足取りで指示された部屋へと向かった。シエラは普段、喋り相手や踊りを披露することしかないので、この一番下の階級の部屋へは来慣れていた。部屋の前で深呼吸し、自分の一番艶やかな笑みを作る。
「失礼いたします。」
返事がない。少し戸惑いながら、シエラはそっと扉を開けた。