莉音は、何かを決めているようだった。
莉音は私のことを考えてくれてるから、怖いとは思わない。
「……莉音、ありがとう」
私は、莉音に聞こえないように、そっとつぶやいた。
「……もしもし?宮野?莉音だけど、今から体育倉庫裏に来てくれる?急いでね?」
莉音はそれだけ言うと、電話を切った。
「栞菜、呼んだからさ、言っちゃおうよ。今言えること全部。宮野もわかってくれるから」
そう言うと、莉音は「じゃぁね、頑張って!」と言ってどこかへ行ってしまった。
「ちょっと莉音っ!一人にしないでよぉっ!」
私は、一人体育倉庫裏に取り残されてしまった。
「ハァ……一人って大っ嫌い……莉音めっ――――!」
そういっていないと、寂しくて胸が張り裂けてしまいそうだったのだ。
怖い……。
寂しい……。
莉音っ!
「若名っ!」
わたしを呼ぶ声が後ろから聞こえた。
この声は、この落ち着く声は……。
「宮野っ!」
私は、声のした方に体を向けて、そのまま走り出した。
「宮野っ!宮野っ!」
私は、宮野に駆け寄って、そのまま飛びついた。
「……宮野ぉ、寂しかったよぉ……」
私は、宮野に縋り付いたままただ泣いた。
「一人は嫌ぁ……。寂しいの、昔は平気だったのに……いまは怖くて寂しくて……」
宮野は、私の頭を優しくなでて「大丈夫、大丈夫だ……」って繰り返していた。
「宮野、私、宮野がいなくなっちゃうのは嫌……。宮野から離れるのも嫌だよぉ……」
ずっと嫌だった。
宮野から離れるのが。
「……私のこと、忘れちゃうんじゃっないかってっ。怖くなってっ!」
宮野は、私を抱きしめると耳元でささやいた。
「絶対に忘れない。俺は、お前を忘れたりしないよ。絶対に」
そういって、私をしっかり抱きしめていてくれた。
「本当……?ほんとに忘れない……?」
「あぁ。忘れないよ」
そう言った宮野は、私から離れて、優しく笑った。
こんな言葉だけの約束、何の意味もないって思ってたのに。
なんでだろう……。
今は、絶対に大丈夫だって思う。
やっぱり、こんなに簡単に信じちゃうなんて、私、相当宮野が好きなんだ。
ほかの男の人だと、こんなにも信じることはでいなかっただろう。
これだけ人にやさしくしてくれる宮野だからこそ、信じることができたんだ。
でも、それも今日でおしまい。
この気持ちとはお別れしなくちゃ。
……だって、迷惑なだけでしょう?
遠くに行っちゃう子から、告白されちゃって……。
「……宮野。私の話聞いてくれる?」
宮野は頷いて近くのベンチへと向かった。
私もあとにつづく。
私は、すぅーと息を吸って宮野を見た。
「……宮野、私はママのところに行くことにしたよ」
「……っ!」
宮野は驚いてるけど、やっぱりって顔をしていた。
「引っ越すのは新学期始まる前ぐらいするつもり。高校ももちろん海外の高校に通う。……だから、今までのことにお礼を言いたかったの。……ありがとう、宮野のおかげだよ」
宮野は優しく笑った。
「私が今生きていられることも、ママと話せたことも、友達ができたことも。全部宮野のおかげだよ。ありがとうっ」
私は、そう言い終えると走って家に帰った。
宮野が追ってくることはなかった。
……ちょっと追ってきてほしかったな。
なんて思っている私は、自分の気持ちを終わらせていないんだってことに、少し悲しくなった。
「……ただいま」
私は、家に帰るとそのまま布団に飛び込んだ。
「……宮野」
やっぱり好きだよ……。
忘れられないよ……。
「……宮野、私、やっぱり宮野が好きだよ……」
私は、そうつぶやいて眠ってしまった。
私が転校するまで、あと2か月を切った頃のことだった。
「Episode6」