「え?」


「え?じゃなくて、俺に用があるから来たんじゃないの?」


「あー...、えっとね...」


.....何も考えてなかった。


勢いよく飛び出してきたけど、話す内容も考えてなかった。


「もしかして、嫌がらせ?」


「ま、まさか!」


「じゃあ、何?」


グッと夏目くんが私の顔を覗き込んできた。


ち、ち、近い!!!!


「あ、えっとね、風邪大丈夫かなって」


思わず、身体を後に下げる。


「あー、もう大丈夫。凛がお見舞いに来てくれたみたいだったけどあんまり覚えてない」


「ッ...」


凛ちゃんの事しか覚えてないんだ。


じゃあ、やっぱりあの事も覚えてない。


それどころか、私が行ったことさえ覚えてないんだ。