「知奈ー、何してんの?早くご飯食べちゃいなさい、遅刻するわよ」
「……」
一階の台所からお母さんに呼ばれて、ふと我に返る。
「はーい、今から行く」
ダメだ、ダメだ。
ぼーっとしてる暇なんかないんだから。
ドタバタと、階段を駆け下りて、食卓に着くと
そこにはいつもは絶対にない瀬戸内くんの姿があった。
「えっ、嘘、珍しくない?」
彼がこの時間帯に起きているなんて本当に珍しくて、つい声を張ってしまった。
「うっさい、飯食ってんの、黙れ」
「えー、そのセリフ瀬戸内くんだけには言われたくないな」
「……言われてんじゃん、ダサ」
低血圧のためか朝は必ず口の悪い瀬戸内くん。
本当どうでもいいようなくだらない言い争いを繰り広げる。
「えっ、でも普段だったらまだ確実に寝てるよね」
「……ま、それは否定しない」
なんかもう話の内容が、本当に薄っぺらくて、くだらなくて思わず口角が上がる。
私たちは顔を見合わせてはははと笑った。
普段、彼はわたしよりも1時間も遅く起きる。
居候の分際のくせに朝食作りを手伝おうという気遣いがないどころか
みんなが朝食の時を取るときだって彼一人はまだ夢のなか。
なのに、お味噌汁は温かい派だからとかわけのわからないことを言って
お店の支度が忙しいお母さんを困らせている。
キミは居候という意味を、お客様だと勘違いしてるはた迷惑ヤロウである。