「……よいしょっ」
心だけでなく体までもがこの夢の終わりを受け入れるのに時間がかかる。
一喝いれて、渋々重い体を起き上がらせた。
一歩一歩、廊下を歩いて下へ行こうとしたけど、あるところで足取りが止まった。
───それは拓ちゃんの部屋の前
ああ、きっと彼の夢を見たからだ。
彼の夢を見たから、つい懐かしくなって、あの離れ離れになった日のことを鮮明に思い出してしまったんだ。
……拓ちゃんが家を出て早くも4年が経った。
だけど、たとえどんなに月日が経過しようと、哀しみはなくならない。
それどころか、今年こそは帰ってきてくれるんじゃないかって期待ばかりが膨らむ。
ねぇ、拓ちゃん。
今、どこにいるの。
今、何をしているの。
大切な家族なのに、
たった一人の兄妹なのに、
ーー知らないことだらけだね